自分らしさって、なんなんだ。
「就活」の言葉は可能性をかっさらう。
自分が築き上げてきたものがまるでなかったかのように思わせます。
だからみんな必死で、学生時代の実績を作ろうとしたりします。
大学の生活なんて楽しむ為に行っていたのに。
でも大丈夫。
あなたは、大学の4年間より、それまでの20年間で形成されています。
ちょっとめんどくさいけど、幼少期を振り返ってみましょう。
この話の前提
特に制限がある話ではないと思いますが、僕自身が大卒就活生だったので、それが前提の就活になります。
この話は「これさえやれば内定率二倍!」というような、具体的テクニックではありません。
あくまで、就活に臨むメンタルのもちかた、もたせかた。武器の磨きかただと思ってください。
また、「とりあえず内定がもらえればいいかな」というかたよりも、「やりたいことは定まっていないけど、納得できる就活がしたい」という方に向いた話です。
- 大卒就活がメイン
- やりがいを感じて働きたい
- テクニックではない就活をしたい
はじめに、僕の就活のはなし
広告代理店に行くつもりでした。
主たる理由はひとつ。響きがかっこよかったから。
大学で広告の勉強をしたこともあって、広告一本で就活を乗り切ろうと考えていた7年前。
そんな僕のもくろみは、夏に行われた代理店のインターンシップ全滅という結果であっという間に崩れ去りました。
正直、ちょっと落ちる気はしていました。
とにかく志望動機が書けませんでした。
なんというか、のどもとでぐっとつっかえたままで、出てこなかったのです。
理由は明白でした。志望する動機は「かっこいい」からだったので、やりたいことも、やれる力もなかったからです。
OBの中には、「俺の頃は正直に『かっこいいから受けました』って言ったら入ったよ」みたいなことを言う人がいて、就活生を惑わします。
でも、今はそんな時代じゃありません。
もっと競争はシビアで、会社の分析もシビアです。
てきとうな雰囲気の人を雇おうとする会社も少なくなってきています。
そんなあたりまえのことに気がついた僕は、一度就活をリセットし、最初から自分は何をやりたいのかということを考えることにしました。
あなたらしさは、たいてい原体験で形成されている
自分らしさとはなにかもう一度考えてみると、僕自身の就活の穴に気がつきました。
それは、「大学でのこと」しか言っていないということ。
エントリーシートには広告が好きだと書いていましたが、好きになったのは大学に入ってからのことでした。
好きなCMは沢山言えましたが、それはただの知識で、僕しか言えないようなオリジナリティはありませんでした。
オリジナリティがなければ会社に受からないということはないと思います。
でも、オリジナリティがない人はその分印象も薄いため、落ちる確率は上がるのです。僕がそうだったように。
オリジナリティを探すためにはどうすればいいのか。
効率のいい方法は思いつかなくて、僕は覚えている限りの「ターニングポイント」を書き出してみることにしました。
通常「人生のターニングポイントはいつですか?」と聞かれることはあっても、「あなたのターニングポイントを全て言えますか?」と聞かれることはありません。
なので、一番強烈に覚えているターニングポイントだけを言おうとするものです。
でも実は、あなたの全てがたった一つのターニングポイントで構成されている訳ではないのです。
思い起こさなければ忘れてしまっている記憶になにかのヒントがあるのかもしれないと思い、僕はこの「ターニングポイントノック」をやってみました。
- はじめて自我を意識したのは3歳だった
- ドラゴンクエストに夢中になって、仮面ライダーになることを諦めた
- 三並夏さんという小説家に憧れて、文藝賞に応募した
- 響きがカッコよくて、上智大学にいくつもりになった
- 祖母に映画のあらすじを話しているうちに、映画脚本家になろうと思った
恥ずかしい思い出がぽこぽこ出てきました。
自分のことはわかっているからこそ、黒歴史を隠そうとします。
歩んできた道に自信がなくて、そういう失敗を経て得た経験をもとに構築した大学ライフに託そうとするのです。
でも、興味関心の根っこは、大学よりもずっと前に構成されているものなのです。
失敗した記憶の中に紛れている「本当の動機」を見つけることができれば、他の誰も語ることができないオリジナリティとして輝きます。
長所は「つくる」ものではなく、もともとある長所を「みつける」作業なのだと思います。
オリジナリティをみつけるには、僕のやった「ターニングポイントノック」がめんどくさいけどオススメです。
たぶん、この作業にめんどくさくない方法はありません。
だからこそ意味があります。みんなあまりやらないからです。
でも、年表を書こうとするとペンが重たいので、誰かに話しているつもりでミニエピソードを延々と書いていくと、いつのまにか完成します。
思いついた時にメモを足していくような感覚で、少しずつ増やしていきましょう。
僕はこの方法で、自分を構成する重要なキーワード「花火」に行き着きました。
- 大学で興味を持ったことなどの根っこは、もっと前の記憶にある
- 生まれてからの経歴をありったけ書いてみよう
- 日記を読み返したり、両親に聞いてみるのもおすすめ
僕の原点は、花火にあった
僕の原点は、花火でした。
小学生3年生の時に、新潟県片貝市で開催される「片貝花火大会」を見に行きました。
そこで見た4尺玉に感動し、花火に釘付けになりました。
大学在学中も一人で各地を周り、花火大会を見て回りました。
落ちたエントリーシートでは、こんなことを「好きなこと」で書いていました。
でも、この文章だけなら花火好きならみんな書けます。それに、花火の会社に行かない限り役にも立たない情報です。
大事なのは、「花火がなぜ好きで、花火からどんな人間性が育まれているか」が書かれていることです。
「頭では分かってるけど、その方法がわからないんだよ」
今まではそう思っていましたが、生まれてからの経歴を書いていくうちに、僕が花火が好きな理由が少しずつ明らかになってきました。
花火が好きな理由は、二つありました。
僕の父親は伝統工芸の金属工芸の作家でした。
父の仕事は好きでしたが、同時に、いつも「もったいない」と感じていました。
一つ一つの作品に打ち込む時間は何百時間もかかるのに、その作品を目にすることができる人はとても少ないのです。
せっかく丹精をこめて作った作品なら、一人でも多くの人に見てもらればいいのに。
そんな気持ちから、小説や映像、花火など、一つの作品が多くの人の目に触れる媒体への興味へと変わっていることに気がつきました。
もう一つの理由は、花火大会が開催される仕組みでした。
一つの花火大会で打ち上げる花火玉の種類は限られています。
1時間半も見ていると、打ち上がることへの感動は薄れていきます。
さらに、一夏で何個も花火大会をみると、大きな音や鮮やかな色彩にも慣れがきてしまうものです。
ところが、僕はいつ花火を見ても飽きがきたことはありませんでした。
花火大会に行った時、僕はあるタイミングで花火ではなく、花火を見ている観客を眺めていました。
なんだかみんないい顔をして見ていて、無料でこの花火を見れるなんていいなあと思っていました。
そこで気付きました。
僕は花火が好きですが、一番好きなのは花火自体ではなく、「花火という伝統工芸が、無料で大勢に見てもらえる仕組み」でした。
突き詰めて考えると、花火はとても規模の大きい「広告モデル」であることに気がつきました。
僕が就活の時に話していたのは、こんな感じのことでした。
子供のころからの記憶を思い出しているうちに、「花火の色や音には飽きてきている」ということに気が付いたのがきっかけでした。
自分の考え方は自分が一番わかっているようで、実は「自分の都合のいい考え方」に寄ってしまうことが多いです。
思考回路はいつも使っている回路の伝達速度が太く、速くなっていきます。
なので、原点に振り返ろうとしなければ、なかなか自分の根っこにはたどり着きません。
ぜひ自分の思い出から、自分の根っこを見つけてみてください。
- 好きなことの、「なぜ」を掘り起こそう
エントリーシートも面接も、子供のころの自分に正直に書こう
僕は、この話一本で僕はエントリーシートを組み立てました。
自己PRには花火玉を描きましたし、志望動機もたいてい花火のことを書いていました。
自分が本当に好きなもの、興味を持っているものに沿っていない会社はそもそも志望しませんでした。
そうすると、代理店を志望していたときに感じていた「のどもとでぐっとつっかえたまま」という感覚は消えました。
自分が好きなものを明らかにし、なぜなのかを分解し、理解する。
僕の場合は「花火」でしたが、一人一人かならず違ったものが出てきます。
好きになるものの対象はかぶることがありますが、原体験からくる考察は必ず個性がでます。
僕は最終的にエントリーシートを書く時に、一つだけ軸に決めていたことがあります。
子供の頃の自分に正直に書こう
人は自分のことをいい風にとらえて欲しくて、ついついかっこいいことを書こうとします。
自己PRをおもしろおかしい表現を駆使して描きたくなります。
それ自体は悪いことではないと思いますが、僕はあまりおすすめしていません。
その表現に動機があったほうが、圧倒的に説得力が増すからです。
僕の描いた花火玉は決して上手ではありませんが、花火に対する愛や、考察はしっかり伝わりました。
会社に入った後、数万通の応募シートをみている人事担当に、「草作くんのエントリーシートは忘れられない」と言ってもらいました。
なんだか文章が書きにくいという時は、まず自分の原点。
子供の頃の自分にそこに書いていることを話してみましょう。
「それ、君じゃないよ」と自分に言われそうなら、もう一度考え直してみましょう。
「君らしいね」と太鼓判をされるようなことを書いていると、面白いもので落とされても「相性が悪かった」と諦められます。
そして、相性の合う会社からはちゃんと求められるようになります。
- 一人一人が持っている原点をみつけよう
- 動機のある表現をしよう
- 子供の頃の自分が「君らしい」と言ってくれるようなことを書こう
おわりに
就活は本当に大変です。僕はもうしたくありません。
でも、その苦しい時期を自分にとって「いいもの」にした人は、いい人生を歩んでいると思います。
自分自身の努力の方向が間違っていなければ、たいてい結果は出るものです。
ぜひ、あなたなりの方法で、就活をいいものに変えてみてください。
陰ながら応援しています。
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