毎日連載中|夫婦世界一周エッセイ

イザベルとセザール ポルトの思い出 - 夫婦で世界一周 –

ポルトガルの港町ポルトでは、C4という名前のairbnbの宿に泊まっていた。

airbnbとは民泊のWebサービスだ。

スペイン:バルセロナで最高の民泊体験をしてから、ポルトも絶対にairbnbを使おうと心に決めていたのだった。

宿を提供するホストの中でもとりわけ評判の高いホストが選ばれる「スーパーホスト」になっているそのC4という宿に決めたのは、宿主のセザールという人がちょっとかっこよかったからだ。

 

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C4という宿は、ポルトの中心街からやや北部にあった。

ポルトのB級グルメフランセシーニャが美味いリオデジャネイロという店と、ホストのサポートをしているお兄さんが「ワンダフルプライス」と評した激安のランチ処、100STRESSがある。

近くのスーパーの手前では、小輪車に野菜をたんと積んだおばあちゃんがいるような、庶民的な街だった。

宿は海カモメが飛び交う姿を眺められる3階にあった。

全部で5つの個室があり、風呂、トイレ、キッチンは共用。

そこを民泊で借りたり、長期的に借りている人がいるようだった。

ポルト大に通うブラジル人のイザベルも、通学のために家として宿を借りている一人だった。

 

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ポルトで過ごす最終日。

僕たちはイザベルとスリランカで知ったジンジャーティーSamahanでお茶会をした。

お互い、相手の国のことをよく知らない。

だからこそ、遠慮なく色々な話をした。

イザベルがポルト大に進学した理由は、母国と同じ言葉が使える国だからだけではなかったそうだ。

ブラジルは治安が悪く、女性一人ではとても暮らせないという。

「特に今はね。」

と前置きした上で、最近のブラジル情勢についてさわりの部分を教えてもらった。

どんな世界も、勢力図が片方に傾いてしまうと、不安定になる。

ブラジルの政治は、今まさにそんな状況なのだそうだ。

「日本は非常に安定している国だからこそ、政治に興味を持つ若者が少ない。いつの間にか法律が変わっていることがあるんです。」

そんなことを言うと、イザベルは心底びっくりしていた。

2週間前に消費税の増税が発表された、と付け加えると、さらに驚いていた。

 

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Samahanを飲み終わったころ、色白の背の低めな男性が入ってきた。

イザベルと親しげに会話したあと僕たちを見て、

「ここにきてくれてありがとう。そして、初日は雨が降ってしまってごめん。」

と言った。

一瞬誰かわからなかったが、会話のながれで彼がセザールであることが判明した。

airbnbのプロフィール写真は、どのホストも大なり小なり顔を盛るようだということは、いくつか宿を使用する中でわかってきたが、その中でも「鬼盛り」レベルだった。

実際のセザールはもっと気さくで、日本が好きな外国人のようなちょっとオタクの雰囲気を醸していた。

雰囲気ではなく、セザールはソファに座るや否や、

「僕は日本の文化が非常に好きなんだ。」

と話し始めた。

「日本語の発音はとても美しい。韓国語も綺麗だけど、日本語はさらに特別だ。クリアできれいなんだ。」

「アニメの文化も素晴らしい。僕はセーラームーンを観て泣いたよ。小さな頃はどういう話かよくわからなかったけど、大人になって見返して、本当に感動したんだ。」

「エヴァンゲリオンは深いね。あんなに深刻な話は観たことない。でも素晴らしい。ポルトガルでは最後の3話(精神崩壊のやつ)は放送されなかったんだ。本当に残念だった。」

セザールは日本人が来るのを楽しみにしていたようで、話したくてたまらない!と言う感じで愉快に話していた。

僕とフウロは驚いた。

世界で日本のアニメが人気という話は知っていたつもりだったが、実際にどういう風に海外で放送されていて、みんな何が好きなのかは現地に行ってみないとわからないものだ。

ナルトじゃなくてボルトの話が出てくるのだから、漫画の文化は現在進行中で成長曲線を描いているんだなと思った。

フウロは大好きな「龍が如く」のことをセザールが知っていてはしゃいでいた。

海外のタイトルでは「YAKUZA」という名前になっているので、日本のオリジナルのタイトルを教えてあげると、セザールも喜んでいた。

おすすめのアニメとして、「宇宙兄弟」をオススメした。

英語版は出ているものの、まだポルトガルには浸透していないらしい。頑張れ!宇宙兄弟。

 

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「日本の和紙を知ってる?」

二人に尋ねてみるも、二人とも首を振る。

やはり和紙もまだまだ認知度が低い。

僕は日本から持ってきた和紙を取り出し、この紙を二人に見せたあと、

「僕が書が書けるので、二人の名前の意味を和紙に書いてプレゼントするよ」

と言ってみた。

反応が怖かったが、二人とも快諾し興味津々という感じでスマホを取り出し、録画を始めた。

「皇帝」と「女神」という字を書き終えると、しげしげと眺めていたセザールは歓喜し、

「僕はこの文字を刺青で彫ることにするよ!」

と叫んだ。入れられても恥ずかしいけれど、嬉しかった。

 

・・・

 

ポルトを離れてもう7ヶ月、僕たちが帰国してからもう半年が経つ。

結婚記念日の日に二人でお酒を飲みながら、いつの間にか話題は世界一周旅行の話になっていた。

「もう一度行きたい国はどこかな?」

「トゥヴァと、ポルトガルだね」

フウロはそう答えた。即答だった。

セザールとイザベル、フランセシーニャとポートワインを思い出した。

いつかもう一度ポルトの空気を吸いたい。セザールたちと一緒に、今度はお酒でも飲み交わしたいなと思った。

海の風とカモメの鳴き声が恋しくなった。

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