この音は、青春だ。
甘酸っぱくて、切なくて、でもそこで味わう苦味はさっぱりと切れがよくて、きらきらと輝いていた。
僕の通っていた学校には文化祭がなかった。
体育祭も無かったし、当然プロムも無かった。
そもそも、女の子もいなかった。
学校の敷地内に女子校があったけれど、表向きに交流をしてはいけない決まりがあって、イベントなど無かったのだった。
ついでに、外出することは禁止だった。
テレビも無かったし、僕は高校三年まで携帯も持っていなかった。
そんな僕たちが女の子と繋がる唯一の手段は、寮の内線電話だった。
学校の敷地内で気になる女の子を見つけたら、名前を調べた。
なぜか名前通の人間というのはどこにでもいて、たいてい名前は割れるのだ。
どきどきしながら、寮の内線電話で呼び出し、「はじめまして」から始める。
特に話したいことなんてないのだ。ただ、多感な時期に女の子と話していたかった。
たとえ沈黙していても、電話が繋がっていたら、それは「話している」ということと同じだった。
時にはこちらも相手も2対2で話したり、「なんでこの子と話したいの?」と呼んでもいない子が出てきて脅されたりもした。
今になってはどんな話をしたのかも覚えていない。
まるで昭和初期のような思い出だけれど、10年ちょっと前のことだ。
色んな感受性が豊かだった。
幸せなことも、苦しいことも、今では耐えきれないくらいビビットだった。
この先何年たっても、内線電話の近くにあるピューラックスの塩素の匂いとか、就寝の掛け声とか、ブーンと音を立ててる冷蔵庫とか、ずっと覚えているんだと思う。
オークランドに住む18歳の女の子が書いた曲には、青春が詰まっていた。
楽しくて苦しい時代の味だ。
国や環境が違っても、繋がる手段が内線電話からtiktokに変わっても、僕らが味わう青春の味は一緒なのかもしれないと思った。
mxmtoon素敵ですよね。
多分ですが同じ学校出身です。3年前に卒業した者ですが未だに内線電話は元気ですよ。
コメントありがとうございます。mxmtoon素敵ですよね。きっとあんな学校は日本に一つしかないのできっと同じでしょうね。
僕は文化祭するのが夢でした笑
今となっては内線電話で顔のよく知らない女の子と電話するなんて、したくても出来ない素敵な青春ですよね。
絶対一緒ですね。笑
今ではどちらの部でも文化祭あるんですよ!
本当に異次元で素敵な青春でしたよね。