はじめに
夫婦での世界一周旅行を終え、家に帰った時に愕然としたことがありました。
旅が終わっても、僕たちは1日たりとも抜け殻になることなく、今日も毎日動き続けています。
旅はそれはそれは素晴らしいことだったけれど、もう過去の話。
今は二人でやりたいと思うことに対して、ノンストップで進み続けています。
「枯渇しないモチベーションの源はどこにあるんだろうね。」
妻のフウロと話している時に、一つのことに行き当たりました。
それは、僕たちの住んでいる家です。
家にあるものがほとんど「僕たちが作ったもの」であふれていたこと。
たとえば、このご飯。
味噌は自家製。
梅干しも自家製。
箸置きは七輪で作ったもの。
テーブルも僕たちで作りました。
僕たちはこうやって自分たちで生活用品を作ったりすることを「自分との関係を深める」「愛着を持つ」ための所作としてやっていたつもりでしたが、こうやって自分たちで作った環境がもう一つのメリットを生んでいるのではないか?と思い始めました。
「この環境がモチベーションを生みだす」ということ。
思えば、モチベーションというのはとても曖昧なものです。
モチベーションって一体どこから出てくるんだろう?持とうと思えば思うほど、なくなるものがモチベーションだと思っています。
僕は、モチベーションは自分が生み出すものではなく、「環境が生み出すもの」なのではないかと思います。
その環境を作る方法が、身の回りにあるものを、完成品を買うのではなく個人または同居人と一緒に「自分の手で作る」ということ。
うまく作る必要はありません。設計図通りに作る必要もありません。
誰かに見せるわけではなく、自分の感情を保てる城を作ることが目的。
このシリーズでは、僕たちがその時必要だと思って作ったものを紹介することで、みなさんのモチベーション作りの参考にしていただければと思います。
作るものに、設計図はいらない
この「作る」ということにおいてとても大事なこと。
それは、既存の設計図はいらないということです。
料理を思い浮かべてください。レシピ本に書いてあるのは、より正確に美味しいものを生み出すための設計図です。
もしこれが料理を作ることが目的であれば、それがベストです。
でも、この記事の目的は「自分たちのモチベーションを生み出す環境をつくる」こと。
そのための設計図は全て自分の中にあります。
その設計図を形にするとオリジナルのものになり、自分の感情を落ち着かせ、モチベーションを向上させるものになります。
僕は、そのために高い素材を買ったりする必要はないと思っています。
それを生み出すために捻出できる予算もまちまち。だから今ある環境の中で作ればいい。
その代わり、妥協はしない。
自分の与えられた環境の中で作り出せるベストを出せば、それで十分です。
目的:世界一周の思い出を家に飾りたい
我が家のリビングは、藁畳の居間をリノベーションした漆喰壁のお部屋。
旅前からフウロが「スッキリしてていいけど、上の部分が少し寂しいよね。」と言っていました。
旅から帰った僕たちには、全11カ所分の膨大な写真が残っていました。
どの国にも、その写真を見ればすぐ写真の中の空気に溶け込めるような、珠玉の一枚がありました。
「それなら、11カ国分の写真をここに飾ろうか。」
今回の額縁作りはそんなところからスタートしました。
答え:浮かし額を二人でつくる
旅後で額縁を買うお金もない僕たちは、家にあるものでなんとか額縁を作ることができないか考えました。
すると、出てきたものたちがこちら。
道具一覧
- フウロの和紙作りの端材
- ワトコオイル
- ヨゴ和紙
道具① 端材
紙すきの道具のために買って置いといた端材が、家の隅に置いてありました。
「いつか使うけど、今必要なのは額縁だよね。」
ということになり、この端材で額縁の枠を作りました。
それぞれ幅1cm〜3cmの間で微妙に違うので、内寸だけ合わせてノコギリで切ります。
家にあった端材で7つの木枠を作ることができました。
残りは4つ。ホームセンターで幅1cmの棒を追加購入し、11個分の木枠を完成させました。
道具② ワトコオイル
我が家の今のテーブルはケヤキの一枚板で作った自家製。
その昔、僕の父親が知人から譲り受けたケヤキを、大工だったフウロの祖父がヤスリかけしてできた一品。
このケヤキ板を仕上げるために使ったワトコオイルがまだ少しだけ残っていました。
ワトコオイルはイギリスのワトコ社が出している室内用のオイルフィニッシュ。
エボニーは色が黒めで落ち着いた色に仕上がるのでお気に入りです。
このオイルで端材を軽く布拭きすることで、無垢材にありがちな作り途中感を無くします。
オイルフィニッシュしたことで、家の雰囲気と統一感が出ました。
素材③ ヨゴ和紙
今回の額縁は、木枠の下に素地となる厚紙を貼って仕上げようという話になりましたが、厚紙をそのまま使うと安っぽさが出て嫌だね。という話になり、フウロが作ったヨゴ和紙を使うことにしました。
ヨゴ和紙とは、塵のない和紙を漉く過程で取り除かれた、大きめの繊維や皮の部分を集めて漉いた和紙のこと。
無造作に入った塵がアクセントとなって独特の味が出るので、包装紙などに用いられることが多いです。
これを厚紙の上に貼ることで土台を作ります。
万能の木工用ボンドで浮かないように満遍なくつけます。
額縁を仕上げる
作った木枠をヨゴ和紙を貼った厚紙に乗せて、額縁の土台の完成です。
このまま写真を貼り付けてもいいですが、浮かし額にすると存在感が出ていいらしく、写真の大きさに合わせてだダンボールを切ります。
満遍なく木工用ボンドを塗ります。
写真を貼る場所に貼り付けて、下準備完了です。
額縁を取り付ける
額縁が完成しました。これから縁を上に貼ります。
ギャラリーなどの吊るし額はしっかり平均をとってデリケートにやりますが、時間がなかったので、インスタントにやることに。
木枠の部分に家に残っていた釘を左右に打ちます。
この釘に糸を巻きつけ、吊るす部分を作ります。
額縁を吊るす釘部分を一定の位置にするため、垂直方向に糸を貼ります。こうすれば穴を開ける場所が揃います。
穴を開けて、釘を打ち付ければ完成です。
額縁の完成
こうして、浮かし額が完成しました。
つけてみると、今までスッキリしていたと思っていたスペースが華やかになり、落ち着きが生まれます。
写真を見上げれば世界一周が頭の中にすっと入ってきます。
おわりに
今回はモチベーションを生む家を作る、浮かし額の作り方を紹介しました。
なにを作るか、なにで作るかは人それぞれ。正解はきっと自分の中にあります。
一つまた一つと愛着の持てるものに囲まれていくと、生活のベースが賑やかになり、同時に落ち着きをもたらしてくれます。
モチベーションの保ち方を模索している方、2019年はまず「ものを作る」をトライしてみては。