life⇆work essay #1 「始考する」

サウスポイントは不思議なところだ。

波がはじめる音と、吹きすさぶ風の音。

青々と深い海の色に、黄金色に輝く枯れ草がそよぐ。

遠くでは雨が降っているのに、崖の端から見える景色には太陽が見えていた。

まるで音や時間のない空間のようだった。


2009年。19歳だった僕は人生始めての海外旅行を、ハワイ島サウスポイントに一人旅をするという形に決めた。

自分なりの約束を果たすためだった。よしもとばななの本を読んで思いついた素敵な試みに句読点をつけるために。

思えばあの経験が、考えを企み、実行に移す楽しさを知った初めての経験だったのかもしれない。

10年近くたって、僕はふたたびその地にやってきた。今度は一人ではなく、妻を連れて。

あの日の波の音に誓った「いつか二人で、サウスポイントの夕日を見る」という企みを果たせたその日は、最愛のペットが死んだ次の日のことだった。

次もまた、この場所に来るに違いない。

そのとき、サウスポイントは僕にどんな始考の櫂を渡してくれるのだろうか。

2021.07.02

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