#4 life⇆work essay モロカンビール

ぷくぷくと泡をたてた茶色い液体。

モロカンビールと呼ばれるそれの正体は、生のミントをふんだんに使用し、茶葉と合わせて煮立てた甘い紅茶だ。

人口の99%がイスラム教徒のモロッコではアルコールを飲む習慣はなく、火を囲み、太鼓を叩き、このモロカンビールをくいっと決めるのが彼らで言う「飲む会」なのかもしれない。

サハラ砂漠の真ん中で、熾火のカチカチはぜる音から、乾いた砂の焼ける香りから、モロカンビールの爽やかな苦味から、絶え間なく打ち叩かれるダルボガの音色があった。

その空気に身を委ねようとしていたが、アルコールを用いることでしか気分を舞い上がらせられない僕よりも、モロカンたちはもう一つ深いところまで受け取っているに違いなかった。

ふいに「歌ってらん」「叩いてごらん」と促される。

顔を赤くしながら大声を上げてみたが、砂漠に吸い取られるように声がなくなり、僕も周りも「そうじゃない」ことが伝わった。

太鼓はまた仕切り直すように鳴り出し、その音は一時間後も鳴り止まないままだった。

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