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80年代のドラム音が映し出す景色ーThe 1975 If You’re Too Shy

 

薄い雲空をジェット機が切り裂き薄藍色の空が顔を出す。

人間の脳は概ね3歳以降の記憶しか保てないというから、僕の記憶は1994年からスタートしていることになる。

でも、僕の記憶を煌びやかに蘇らせるその音楽は、僕が生まれる5年以上前に作られたものだ。

 

 

そのドラムの音の音が一つのその光景を映し出す。

突き抜けたようなドラムの音、音圧は低く、遠くではスーッというホワイトノイズが聞こえる。

でもそれがまるで自分が空でそれを聞いているような錯覚を与えてくれるのだ。

 

 

1994年。ダボついたトレーナーを着てF1の映像に釘付けになった。

アイルトン・セナが死んだことを嘆いて似顔絵を描いたらしい。

記憶のない僕はなにかその空に夢中になっていた。

TOP GUNもT-SQUAREも作られたのは、80年後半。上昇気流の最中に生まれた眩い世界の音だ。

消費税が開始されて灰色の経済に変わっていく最中で見ていたものは、無邪気に明るくて活動的なその音だった

 

ドラムの音が誘う世界は80年代〜90年代のあの時の音だった。

The 1975のIf You’re Too Shyの音源を聞いたのは今年の2月ごろだっただろうか。

海外のライブでお披露目されたその新曲が僕の元に届いたのは、公演の翌日だった。

見始めたら止まらなかった。

背景はアナログテレビ。音に夢中になりすぎて歌詞の一つも入らなかったが、多分僕の感じるその空気が間違っていたことはないだろう。

もう戻らないと知っているその世界に幻想を抱くことは、もうない。

けれどあの音がこうして蘇るたびに僕は記憶のかけらからセナを探し、自分の輪郭を作っていく。


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